世界の有名バターメーカー
フランスの職人工房からアイルランドの大牧場、北海道の協同組合まで——世界11のバターメーカーを産地・製法・特徴とともに徹底解説する。
ル・ブール・ボルディエ
サン=マロを拠点とするジャン=イヴ・ボルディエが作る職人バター。19世紀の木製バラット(攪拌機)を今も使い、3〜4日かけて手作業でチャーニング・練り上げる。ブルターニュ産の発酵クリームを使い、海藻・スモーク塩・柚子・ラズベリーなど独創的なフレーバーバターも展開。パリの高級レストランの多くが使用する。
木製バラットで手作業チャーニング。3〜4日の熟成発酵。地域の個性が出た風味。
フランス国内・一部輸出
エシレ
フランス中西部のエシレ村で1894年に設立された協同組合が作るバター。AOPの認定を受けた「ブール・ダンテ・エシレ」は、木製バラットで作られる数少ない工場生産バターのひとつ。独特のヘーゼルナッツのような風味と高い乳脂肪分(84%)が特徴。パリのリッツ・ホテルやル・ブリストルなど最高級ホテルの御用達。日本でも伊勢丹などで販売される。
木製バラット使用。乳脂肪84%。AOP認定。ヘーゼルナッツ様の発酵香。
フランス・日本・一部アジア
イズニー
ノルマンディーのイズニー=シュル=メールを拠点とする協同組合。「ブール・ディジニー」はフランスで最初にAOP認定を受けたバターのひとつ。ノルマンディーの豊かな牧草地で育った牛の生乳を使用し、クリーミーで濃厚な風味が特徴。クリームの乳脂肪分が高く、製菓・料理用として世界中のプロシェフに愛用される。
AOP認定。ノルマンディー産生乳100%。高乳脂肪(84%)。クリーミーな風味。
フランス・ヨーロッパ・日本・北米
ケリーゴールド
アイルランドの乳業協同組合Ornua(旧Irish Dairy Board)が展開する世界最大のバターブランドのひとつ。アイルランドの牧草地で年間300日以上放牧された牛の生乳を使用するグラスフェッドバター。鮮やかな黄色と豊かな風味が特徴で、オメガ3脂肪酸・CLAが通常のバターより多い。アメリカでは輸入バターとして最大のシェアを誇り、バターコーヒーブームで日本でも知名度が上がった。
グラスフェッド。年間300日以上放牧。高いCLA・オメガ3含量。鮮やかな黄色。
世界150か国以上
アンカー
ニュージーランドの乳業大手フォンテラが展開するバターブランド。1886年創業の老舗で、ニュージーランドの広大な牧草地で放牧された牛の生乳を使用。温暖な気候と豊富な降雨量に恵まれたニュージーランドは、年間を通じて新鮮な牧草が得られる世界有数の酪農適地。アジア・中東・英国で高いシェアを持ち、日本でも業務用として広く使われる。
グラスフェッド。ニュージーランド産生乳100%。安定した品質。コストパフォーマンスが高い。
アジア・英国・中東・日本
ルール・ブランド
デンマークの乳業大手Arlaが展開する世界的バターブランド。1901年に「ルール」(デンマーク語でラッパの意)を冠したブランドとして誕生。デンマークの発酵バター(ラガーバター)の伝統を守り、独特のクリーミーで淡白な発酵香が特徴。世界100か国以上で販売され、英国では最も人気の高いバターブランド。スプレッダブル(塗りやすい)タイプも展開。
デンマーク発酵バター。淡白でクリーミーな風味。スプレッダブルタイプが人気。
世界100か国以上
ヴァリオ
フィンランドの乳業協同組合Valioは、北欧最大の乳業企業のひとつ。フィンランドの厳しい環境基準のもとで生産される高品質なバターで知られる。「ヴァリオ・ヴォイ」は発酵バターの伝統を守りながら、現代的な製造技術を組み合わせた製品。フィンランドでは広く使われるブランドだ。ラクトースフリーバターなど多様な製品も展開。
フィンランド産生乳100%。厳格な品質管理。ラクトースフリー製品も展開。
フィンランド・北欧・一部輸出
プラガー・ファームステッド
アメリカのCreamery Package Manufacturing Companyが開発した、ヨーロッパスタイルの高脂肪バター。乳脂肪82%と通常のアメリカンバター(80%)より高く、水分が少ないため製菓に最適。フランス語で「より多くの脂肪」を意味するPlugráは、アメリカのプロシェフ・パティシエの間で広まった。クロワッサン・パイ生地など高脂肪バターが必要な製菓に特に適している。
乳脂肪82%。ヨーロッパスタイル。低水分。製菓・パン用に最適。
アメリカ・一部輸出
よつ葉乳業
北海道十勝・根釧地区の酪農家が出資する協同組合系乳業メーカー。「よつ葉バター」は北海道産生乳100%使用で、コクのある風味と滑らかな質感が特徴。近年は発酵バターも展開している。業務用・家庭用ともに展開し、製菓・料理のプロからも高い評価を得ている。北海道の酪農家の顔が見える生産体制が強み。
北海道産生乳100%。協同組合系。発酵バターも展開。プロ向け業務用も充実。
日本全国
カルピス(アサヒグループ食品)
カルピスバターは、チーズ製造の副産物であるホエイクリームから作られる特殊なバター。通常のバターより淡白でクリーミーな風味を持ち、製菓・料理用として日本のプロシェフ・パティシエに広く使われている。特に焼き菓子・クロワッサン・フィナンシェなどで使うと、バター臭が少なく上品な仕上がりになる。「カルピスバター(特選)」は高乳脂肪で製菓業界のスタンダードとなっている。
ホエイクリーム使用。淡白でクリーミー。製菓に最適。日本独自の製法。
日本全国
明治
日本最大手の乳業メーカーのひとつ。「明治バター」は日本で最も広く流通するバターブランドで、安定した品質と手頃な価格で家庭用・業務用ともに広く使われている。北海道産生乳を使用し、大規模な工場での効率的な製造により安定供給を実現。家庭での調理・製菓から業務用まで幅広く対応する。
北海道産生乳使用。安定した品質。手頃な価格。全国流通。
日本全国
バターメーカーを選ぶ基準
用途で選ぶ
製菓・パン用には高乳脂肪(82〜84%)のヨーロッパスタイルが最適。日常の調理・トーストには普及価格帯の国産バターで十分。発酵バターはそのまま食べるのに最も向いている。
産地・原料で選ぶ
グラスフェッドバターはオメガ3・CLAが豊富で風味が豊か。ノルマンディー・ブルターニュは発酵バターの産地として知られる。北海道バターは安定した品質と国産の安心感が強み。
製法で選ぶ
木製バラット使用(ボルディエ・エシレ)は最高品質だが価格も高い。連続式製造は安定品質で価格が手頃。発酵バターは乳酸菌の風味が加わり複雑な味わいになる。